粋を楽しむ。
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「地元に支えられてきた店だから、ずっと地元で愛されるお店に」
食べやすくておなかいっぱいになれる、みんなにやさしいそば
[牛浜]そば処 ほそ川
東京都福生市牛浜60
営業時間11:00~15:00 17:30~20:00 定休日:木
福生の牛浜駅から少し歩くと、趣のある佇まいのおそば屋さんに出会えます。住宅街の中、長年地元の人に愛されてきた「そば処 ほそ川」。会社員も、リタイアしたおじいちゃんも、家族連れも女性のひとり客も、本当にいろんな人が訪れるお店です。今回は三代目の細川彬さんにお話をお伺いしました。

製麺所からおそば屋さんへ

── このあたりで歴史のあるおそば屋さんだとお聞きしました。
細川氏(以下敬称略):開業は昭和28年になります。自分の代でいま7、8年くらいですね。
── 開業されたのは今と同じ場所ですか?
細川:同じですけど、元々はお店ってカタチではなくて製麺所だったんです。おそばの麺だけ売ってたんですね。その中で、昭和28年に祖母が、お客さんからの要望でお店みたいなことをはじめたそうです。その後、父が2代目、僕は3代目です。
── 彬さんはそれまで、どこかのお店で修行されてたんでしょうか?
細川:修行はこの店で、親父に教えてもらいました。継ぐ前は普通にサラリーマンで、まったくちがう仕事してたんですが、父の具合が悪くなって、店を継ぐことになりました。
── 何年くらいお勤めだったんですか?
細川:2~3年ですかね。
──会社勤めしながらも、子どもの頃からなんとなく、跡を継ぐのかなあという予感はありましたか?
細川:まったくなかったです、ほんとにまったく。父の調子が悪くなって、いわゆる家族会議でお店をどうするって話になって、急に継ぐことになりました。
平打ち太め、ボリューム感のあるそば

──製麺所から始められたとのことですが、今も自家製麺ですか?
細川:そうです。手打ちしてます。
──そば粉の割合は二八ですか?
細川:季節によってはつなぎが多くなることもありますが、基本的には二八です。
──こちらのおそばは、平打ちでちょっと太めだとお聞きしました。
細川:ほかのおそばやさんだと細く切るっていうのが主流だと思うんですけどね。うちの場合だと地域柄、お昼に食べに来てくれるお客さんが多いんですよ。そうするとおなかにたまるそばの方がいいなと思って。それで父の代から、食べごたえのある、平打ちのちょっと太めの麺にしてるんです。
──そばの盛り方もたっぷりですが、それもやっぱり食べごたえがあるようにと、意図的なものなんですね。
細川:はい、そうです。おそばやさんへ行って、おなかいっぱいになるって、なかなかないかなと思うんですよね。だから、これだけでおなかいっぱいになってもらえればいいなと。
──麺が太いのはボリューム感を出すため、ということですが、ちょっと平べったくされているのはなぜですか?
細川:太いだけだと、おそばとしてちょっと違和感があるんですよ。平打ちのほうがちょっと食べやすいというか。いろいろとやってるうちに、自然とこのカタチになったみたいです。
──麺の色はちょっと黒めかなと思いますが、これは、そばの実の外側まで使われているからですか?
細川:そうですね、そばの実をまるごと挽いたものを使っています。平打ちで太い麺だと、どうしてもそばの香りが抜けちゃうような気がするんで、実の外側の部分も入れて、香りを立たせています。
──なるほど、打ち方というか太さに合わせての選択なんですね。ちなみにそば粉の産地はどちらですか?
細川:北海道産を使っています。父がいろいろ試して、うちにはこれが一番合うんじゃないかという粉を見つけてきまして。コシと香りが強いんです。
──そういえば、お店の裏でバイクをお見かけしましたが、出前もやってらっしゃいますか?
細川:はい。うちの麺がちょっと太いのは、出前の兼ね合いもあるんです。細い麺だと、どうしても温かいそばが伸びやすくなっちゃうので。
──なるほど、そういう必要性もあったんですね。
細川:そう、うちは半分くらいは出前ですから。
──半分ですか!都心のほうだと、今はオフィスの環境も変わったし出前はやめたというお店が多いんですが。
細川:うちはまわりが住宅街なんで、そういう需要は高いのかもしれませんね。
食べやすさを考えた甘めのつゆ

──つゆのほうなんですけど、だしは何を使われていますか?
細川:だしは本鰹と宗田鰹とサバを挽いたもの、あと昆布ですね。近くに乾物屋さんがあるので、そこで挽いてもらったものを朝一番に取っています。
──関東の方で昆布はめずらしいですね。
細川:昆布を入れた方が、だしに深みがでるんですよね。
──かえしは何を使われてますか?
細川:しょうゆと砂糖とみりんです。
──つゆはちょっと甘めだそうですが、そうされてる理由はなんでしょう?
細川:しょっぱいと、ご高齢の方が嫌がることが多いんですよ。なのでちょっと甘くして食べやすいようにしてるんです。温かいおそばのつゆだけじゃなく、冷たいそばのつけ汁も他のお店より甘いと思います。そば湯と飲みやすいように。
──なるほど、高齢の方は塩分が気になるかもしれないですね。
そびえ立つごぼ天

──ちなみに人気のメニューはどちらになりますか?
細川:「ごぼ天もり」ですね。
──立体的な盛り付けで、写真映えしますね。
細川:普通に盛り付けるより、立体的な方がお客さんも喜んでくれるんじゃないかって、親父が考えたそうです。うちはこれを注文する人が圧倒的に多いですね。
──「糧もり」というのはどんなおそばなんでしょう?
細川:そばとうどん両方入っていて、野菜の天ぷら、なすの煮浸し、漬物がセットになっています。糧もりの「糧」というのはもともと「おかず」っていう意味なんです。うどんとそばだけでなくおかずも食べられる、というので父が考えたようです。
──ごぼ天にも糧もりにも「おなかいっぱいになってほしい」という願いがこもってますね。いまのメニューは2代目が開発されたものが多いんでしょうか?
細川:そうですね。新メニューもいろいろやってるんですけど。東京エックスを使った肉汁せいろとか。
──そういえば、この辺りは東京エックスの産地ですね!お客さんはやっぱり地元の方が多いですか?
細川:そうですね、年齢層も本当にばらばらで。今はコロナの関係であんまり出られないようですが、以前は場所柄、横田基地の方も来られたりしてました。
地域コミュニティに貢献していきたい

──お店を継がれて7年ほどとのことですが、今後はどういうお店にしていきたいですか?
細川:やっぱり今までずっと地域の人に支えられてきたので、地域に密着した、地元の方により愛されるようなお店にしていきたいですね。せっかく出前もありますので、ご高齢とかでお店に来るのがむずかしいような方にも、食べていただけるようにしたいです。
──新しくこういうことしたいな、というのもあれば教えてください。
細川:2階が結構広い宴会場になってるんで、たとえばクラブ活動だとか、いろんな会を開いてもらって、最後にみんなでおそばを食べる、みたいなことができるといいかなと思ってますね。今は時期的にちょっとむずかしいけど。
──たとえば地域の方のサークルとか?
細川:そうですね、そういう集まりの場になれたら。
──本当に地域密着でコミュニティに貢献したいという思いを感じます。早く地元の人が集まれるようになるといいですね。

