粋を楽しむ。

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「街のそば屋でありたい」
赤坂で40年。さりげないのに、深いこだわりが光るそば

東京都港区赤坂3-20-2
営業時間[月~金]11:30~15:30 / 17:00~19:45(ラストオーダー) 定休日:土・日・祝

 うっかり見逃してしまいそうな、通りの奥。のれんをくぐると、上品で心地よい雰囲気のお店がありました。「赤坂見附 長寿庵」。
 店主の近藤恭司さんは15の時に新潟から上京し、「長寿庵 赤坂本店」で修行された後、昭和56年に開業。以来この場所で40年近く、そばを打ちつづけてきました。

・にぎやかな通りの奥に、白いのれん。店先はていねいに打ち水されています。

そば粉はぎゅっと握って選ぶ

── こちらのお店は二八そばということですが、もともと修行された赤坂の本店が、二八そばだったんですか?
近藤氏(以下 敬称略):いや、うちは本来、昼は七割五分なんですよ。750gの蕎麦粉に対して、250gの割粉。夜は八割を打つんだけどね。

── 0.5の話ですけど、それでもやっぱり全然ちがうものですか?
近藤:ええ、そりゃちがいますね。

── お昼と夜はどうして分けてらっしゃるんですか?
近藤:お昼はサラリーマンの方たちが多いんでね、その前は出前もやってたし。やっぱりそば粉が多くなるとどうしても伸びちゃう。二八で出前はできないんで。

・どこか懐かしい雰囲気の店内。これは……たぬきそば!?

── こちらのおそばの、こだわり、特長を教えてください。
近藤:こだわり……そうですね、国産しか使わないですけど、今は福井のあわら市産を使ってて。北海道がよければ北海道のを使ったり、いいのをとって使ってます。

── そば粉ってどうやって選ぶんですか?
近藤:それは色だったり、香りだったり。あとこう、ぎゅっと握った時の感じ?

── 握った感じ?弾力ですか?
近藤:いや、どう説明すればいいのかなあ……こう、ぐっと握った時のかたまり具合みたいなものかな。(手をぎゅっと握る)

── 乾いた状態で握って確かめるんですね。おもしろい!そば粉は問屋さんから買われるんですか?
近藤:そう。こういうのあるんだけど、どう?って少し持ってきてもらったりね。よければ使ってみるし、自分の好みだからね、ちょっとあれだなと思えば、またにしようって。

── 小麦粉もこだわりが?
近藤:小麦粉もやっぱり国産で。

── 正直、国産になると金額はだいぶちがいますか?
近藤:全然違います。今は外の方でも、カナダとか、いいのもありますけどね。

温そばと冷そばによって、だしもかえしも変える

・おすすめメニューの鴨せいろ。きりりとしたそばに喉が鳴ります。

── おだしはどういうものを使ってますか?
近藤:だしはね、温かいおそばと、暑い時期に食べるもりやざるは、鰹節からちがうんですよ。

── 変えてるんですか!
近藤:かえしもね、お醤油は一緒だけど、温かいのと冷たいのでは、作る過程が全然ちがう。

── すごいですね!
近藤:かえしは本来、みりんと砂糖とお醤油を釜に入れて、あくを取りながら煮るんですよ。それをカメにあけて、休ませるんです。そうでないのは、お醤油とお砂糖をだしにあわせて、たぬきだったり、天ぷらだったりのつゆを作るんです。

── そのかえしの配合って……あ、ごめんなさい、企業秘密ですよね(笑)
近藤:(笑)

そばの味と違うところで、ちょっとした遊び心を

・そば前の定番、板わさ。蒲鉾の白さを際立てる器にも注目。

── おそば屋さんを長年つづけていらっしゃいますが、個人的に好きな食べ物はなんですか?
近藤:私はやっぱり、そばが大好きですね。

── そうなんですか!ちなみに他のお店に食べに行かれたりします?
近藤:しょっちゅう行きます。

── 自分のお店のそばと比べたりしますか?
近藤:そうね、やっぱり、マンネリになっちゃうといやなのね。だからよそのお店でこの時期どんなそば粉使ってるかなとかさ、そういうのをね。あとはそば前で、ちょっとお酒飲んでからそば食べたりね、そういうの好きでね。

── いいですね!まさに江戸の粋ですね!

・おつまみのひとつ、玉子焼き。ふんわり夢心地のおいしさ。

── そば屋さんって、他のおそばやさんに行って勉強しても、じゃあそれで自分のところのそばを変えようっていうのは、基本的にないじゃないですか。
近藤:それやったらこわいですね。

── 他のおそばを食べて、つい影響されちゃったりすることはないですか?
近藤:単に味だけじゃなくて、器だったり、そういうのは見ますね。

── あ、そういうところなんですね!
近藤:神楽坂に行きつけの店があってね。そこのご主人の、味もそうだけど、器だったり、お酒の種類だったり、そば以外の料理を見たりしますね。

── そうすると、こちらのお店でも器はこだわってらっしゃる?
近藤:こだわるっていうか、まあ自分の好きな器ですよね。同じものをたくさんは買わないです。せいぜい5個とか。

── それはなんでですか?
近藤:天ぷらだってなんだって、全部同じ器で提供しなくちゃいけないって、そういうのはありませんからね。

── なるほど!同じ料理でも、いろんなお皿で提供されるとおもしろいですね。仕事だけど、そういうのは個人的な楽しみでもありますよね。

・一見、そばちょこに見えるけど小皿なんです。まさに遊び心!

近藤:ええ、私はよく話するんですけど、遊び心みたいなね、そういうのがいいですね。
── そういう遊び心、すてきですね!

街のそば屋でありたい

── おだしも鰹節から厳選して、そば粉も割粉も国産のいいもので、かえしもメニューによって分けて、器まで遊んで、すごいこだわりですね!
近藤:うん、でも俺はやっぱり、街のそば屋でいいと思ってるのね。よく、そば1枚で3000円みたいなのもあるけど、そんなの食べなくていいかなと(笑)

── バランスが難しいですよね、そばは元々庶民の食べものだから、あまり高くなりすぎてもっていうのもあるし……。お店のこだわりとしては、あんまり高級すぎないようにしたいですか?
近藤:うん、そう。ずっと街のそば屋でありたいですね。

・夕方からそば前で、粋な江戸っ子気分を満喫できます。